観戦症

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サッカー、野球、ラグビーーースポーツ観戦が空前の大ブームとなっている。プロだけでなく社会人や大学、高校、さらに小・中学校に至るまで、さまざまな階層で行われるあらゆる試合で、会場は常に観戦者で満員となっていた。
スポーツ観戦に熱が上がった人たちは「観戦症」と呼ばれるようになり、中には学校や会社をサボって観戦に夢中になる症例も数多くあらわれたことからサボタージュサポーター、サボサポ病と揶揄された。
観戦症の感染者数は歓声の高まりとともに増加し続け、その症状も悪化した。スポーツ観戦に熱狂し過ぎた観戦症の観戦者の群衆が暴徒化し、会場の内外で暴れるなど深刻な問題となった。
国家の治安を揺るがす有事ということで、政府は緊急事態宣言を発出し、観戦症の感染拡大を抑えるためのワクチンの開発を急いだ。そして、画期的なワクチンによって観戦症は終息したものの、スポーツ観戦の熱も下がり、観戦者数も激減してしまった。
ホラー
公開:22/12/10 07:01
サッカー 野球 ラグビー スポーツ 観戦 サポーター 感染 有事 緊急事態宣言 ワクチン

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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