一ヶ月の雫

今年も残り一ヶ月だ。あと一ヶ月で何ができるというだろうか。たった一ヶ月では大したことはできないだろう。そんな事を思っている時に彼女に出会った。
彼女は倒れていた。僕の家の前で。慌てて僕の家に運ぶと、彼女はお腹が空いたと訴えてきた。だから彼女の為にご飯を作った。
「うっ……まずい……」
そんなに顔をしかめる程まずかっただろうか。ちょっと傷つくな。まあ確かに男の一人暮らし。男飯くらいしか作らないから、大したものはできないけれど。ご飯を食べた彼女は、僕にお礼を言う。そして台所を貸してと言って、料理を作ってくれた。その料理は美味しくて、ついおかわりしてしまった。
「ねえ。私と契約しない？一ヶ月住まわせてくれたら料理教えてあげる」
そう言われ、僕はどうしても自分であの美味しい料理を再現してみたく、二つ返事でオッケーした。一ヶ月で料理は見違えるほど上達した。残り一ヶ月。何でもやる気になればできる。