漂う箱舟

宙を箱舟が漂っていた。神秘的で絢爛豪華な箱舟である。誰もが羨望の眼差しを向けた。
品行方正な者が箱舟に乗りたいと申し出たら、満席だと断わられた。
人を何人も殺して金を盗みまくった者がいた。その者は箱舟に乗れた。さっき満席だと言いませんでしたかという問いかけには、そんなことは言ってないという返事がきた。
金持ちが乗せてくれと言った。簡単に乗ることができた。金持ちが経営する会社によって苦しめられたライバル会社の者たちや、その関係者などは乗ることができなかった。
飢え死にしそうな人たちも乗せてくれと言ったが、また満席だと断わられた。
箱舟に乗った者たちは天国へと、送り届けられているらしい。乗れなかった者たちは地獄にいくか、魂が地上を彷徨い続けるらしい。
箱舟に乗れる基準はよく分からないが、選ばれた者は乗ることができるらしい。乗り方のマニュアルは無いらしかった。
箱舟は今日も宙を彷徨い続ける。