2
2
行列のできるというぐらいだから人気店だろうと、大して道も調べずに行ったら店の前で何往復もしてしまった。なにせ、行列がないばかりか看板もないのだから。鉛筆屋なんてやっぱり流行らないのだろうか。狭い入口を入ると店の奥は意外に広く、壁一面に箸が並ぶ京都のお箸専門店のように、壁一面にずらりと鉛筆が並んでいた。壁の下は棚になっていて、そこには [ご自由にお試しください] という案内とともに、小さな白いメモ用紙が置いてある。僕は、予めよく削ってあるお試し用の鉛筆を1本とって、好きなあの子の名前を書いた。葵。
どこから入ってきたのか、1匹のアリが鉛筆の方へやってきて、鉛筆と僕の書いた文字とのまわりをうろうろしてからどこかへ行ってしまった。しばらくすると、さっきのアリが仲間を連れ、列をなして戻ってきた。アリ達は、メモ用紙から葵を丁寧に剥がすと、ヒョイと担ぎ上げ、大名行列よろしくしずしずと歩き出した。
どこから入ってきたのか、1匹のアリが鉛筆の方へやってきて、鉛筆と僕の書いた文字とのまわりをうろうろしてからどこかへ行ってしまった。しばらくすると、さっきのアリが仲間を連れ、列をなして戻ってきた。アリ達は、メモ用紙から葵を丁寧に剥がすと、ヒョイと担ぎ上げ、大名行列よろしくしずしずと歩き出した。
公開:22/12/04 23:54
初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
ログインするとコメントを投稿できます