ホエールウォッチング

　空を見る。今日も雲のクジラが青空を悠々と泳いでいる。
　空を見渡す、宙から降る煌びやかな雨をクジラが群れを成して追いかけている。大きく口を開いて雨を追うが、クジラ達は追いつけない。群れの中の一頭が、大きく口を開け、立ち上がり、降る雨を口に向かい入れる。
　一頭がそうしたのを皮切りに、残る群れのクジラも立ち上がり、大きく口を開け、雨を口に向かい入れた。煌びやかな雨がクジラの中に落ちていく。
　——クジラたちが大きくなっていく、成長しているのだ。
　クジラたちが僅かに点滅しはじめ、地響きのような唸り声を出し始める。やがて、クジラたちは激しく発光し、空の果てまで轟く咆哮をあげ、空を猛々しく泳ぎ回る。
　なんと美しいことか。私はこの景色に呼吸を忘れるほど心を奪われていた、この人間には到底創り出すことのできない超自然の景色に。