ヤギ姉さん

姉さんは言った。
「あー、ヤギになりたい。青々とした牧場を自由に走り回りたい。もふもふだし」
俺はそれを聞いて、この人は現実に疲れているのではないかと思った。
「ヤギになったら、もうテレビとか見れないよ？」
「いいんだよ。どうせさ、つまらないニュースとか悲しいニュースばっか見なくちゃいけないんだから。バラエティー番組もつまらないし」
「じゃあご飯は？美味しい物食べれないよ」
「毎日ご飯のメニュー考えて作るの面倒なんだよね。だからさ、今日は草。明日も草。明後日も草。その方がメニュー考えなくていいから楽じゃん」
「姉さん。ヤギになりなよ」
「なろうか」
「どうやってなるの？」
「私、昔は魔法少女だったんだよね」
「突然のカミングアウトだね」
「魔法は今でも使えるよ」
「衝撃の事実だね」
こうして姉さんはヤギになった。ヤギになった姉さんは、とても自由気ままに幸せに暮らしている。