幼き約束

だれにだって、幼稚園の先生に恋心を抱いたことはあるだろう。
「大人になったら先生と結婚する！」と小さな指で、指切りげんまんをした園児も多いはずだ。
そうした約束は、幼い頃の思い出として清らかに過ぎ去るものだ。
それなのに、タカユキの前に突如として元幼稚園の先生を名乗る初老の女性が現れたから驚いた。
「モモ組担任のヒロミ先生を忘れるなんでひどいわ。　タカ君が大人になるのを、ずっと待っていたんだから」
タカユキはため息をついた。これで結婚を迫られるのは五人目だ。小学校の担任に、中学校の先生。さらには保健室の先生に、給食のおばさんまで。
なんで、こうも昔の約束が掘り返されるのだろうか。
宝くじで六億円が当たったばかりに。