カラフル注射

ある日。森林に泉が湧き出た。その泉の水は、汲み上げる度に違う色になるので、興味を抱いた学者が調べてみると、「人の性格を変えられる成分」が発見された。 怒りっぽい人に青色を打つと穏和に、無口な人に黄色を打つとおしゃべりになり、180度違う人生が味わえるという。勿論、人体に害はない。
このニュースは瞬く間に世界中を席巻し、接種場には連日「今の性格を変えたい！」と思っている人達の行列ができた。

「これは良い儲けになる…」学者はにやりとした。
ところが…接種が行き届かないうちに、泉のほうが尽きてしまった。慌てた学者は、残った成分から似たものをつくり、人々に接種を続けた。
打った人々は果たして、健康被害も、偽物だと気づくこともなく、嬉々として新しい人生を過ごしているらしい。
「結局、性格なんてものは見方次第で良くも悪くもなるのだ。」
ありのままが一番なのだ…と、豪邸の一室で学者が独りごちた。