ドラフト制度

高田という男は天才野球少年で、投手として甲子園で三回も優勝した。史上初の十二球団がドラフト一位で重複指名するという騒ぎになった。
だが高田はドラフト制度に強い疑問や不満を持っていた。くじ引きや向こうからの指名によって決められて、こちらが選ぶ権利が無いというのは職業選択の自由に反しているではないかと思ったのだ。
だから高田もファンのチームが一位指名を引き当てて喜び勇んで彼の家に来てくれても、彼はチームは好きでも制度が嫌いだからと頑なに入団を断った。
契約金は弾む制度の見直しも検討するといくら口説いても、彼は首を縦に振らなかった。
仕方がないと、そのチームも諦めた。
高田は大学受験をした。しかし野球ばかりやっていたから受かるはずもなく、どの大学も落ちた。
就職先もなかなか見つからず、やむを得ず知人のコネで小さな町工場に入った。
制度に不備はあっても選ばれているうちが花なのかなと高田は思った。