朗読組合

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技術進歩によって人工知能やロボットが活躍するようになった社会では、生身の労働者である人間は仕事とプライベートの両方を充実させるワークライフバランスを実現し、職場環境や待遇の改善を図る労働組合は不要の産物となっていた。
厚生労働省は福利厚生余暇省に衣替えして週休四日制を義務付け、労働者は休日を楽しむための趣味を探すことになった。
そこで新たなブームになったのが朗読だ。好きな書物をいかに気持ちを込めて朗読できるかを競いあう大会が行われるようになった。朗読大会には個人以外に団体戦もあり、いかに協調しながら朗読できるかが大切になる。
ちょうど労働組合の活動が衰退してきたので、労働者が一致団結するための拠り所として集団で朗読することを選び、労働組合が「朗読組合」と呼ばれるようになった。
今宵も労働時間外で朗読組合のメンバーがメーデーや勤労感謝の日に合わせて開催される朗読大会に向け、練習に余念がない。
その他
公開:22/11/23 07:00
労働者 仕事 ワークライフバランス 職場環境 労働組合 厚生労働省 朗読 書物 メーデー 勤労感謝の日

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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