京風・訪問介護

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しまった…うっかり杖を落として転んでしまった。息子はまだ帰らないし、誰もいないこの状況でどうするか?
確かもう少しで、ヘルパーと理学療法士が来ると聞いているが…。
「おこしやす〜」
明るく上品な声がしたので顔を上げると、和髪に着物姿の女性が正座をしていた。
いつの間に…それに「おこしやす」とは?ここ儂の家だぞ。
「さあさ、倒れた体を起こしやす〜」
女性は御辞儀をして立ち上がると、儂の体をヒョイと起こし、座布団に座らせた。
「おいでやす〜」
今度は玄関の方から違う女性の声だ。何処からか三味線の音も聴こえてくる。
「旦那はん、こっちへおいでやす〜」
儂の体は杖無しで立ち上がり、自然と声のする方へ歩き出した。
妙に懐かしい気分…そういえば昔は出張先で芸妓遊びなんかをしたなあ…。

リハビリの効果か、父がゆっくりとだが杖無しで歩ける様になった。
まるで祇園小唄でも舞うかの様な、優雅な手足の動きで。
その他
公開:22/11/25 19:10

くろせさんきち( 園山グラウンド )

まずは自己紹介代わりの作品『私の頭の中のカマボコ』から

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