心くすぐる香り

子供の頃、それは病気だと思っていた。私は時折、人を認識できなくなる。目の前にいる人が男か女か分からなくなる。
さっきまで話していた相手の姿が突然真っ黒い影に変わるのを見た事もある…それはとても怖かった。
だが、大人になった今ではそんな症状とも上手く付き合っている。
そもそもこれは代々探偵業を営んでいる我が家の特殊能力のようなものだった。
そう…私は推理マンガのように犯人となるべき人物の姿が認識できなくなるという症状の持ち主だ。
犯人の犯行を目の当たりにしたり、犯行を暴けば姿が見えるがそれまではまるで認識できない。
だから私は必ず相棒を同伴させている。黒い影を見つけては、その人物を調べさせている。
先程も黒い影と遭遇した。犯罪の香りはいつも私の心をくすぐらせる。
さて…今回はどんな事件に出会えるかな？
犯人を見つけたんだ。さ、相棒。あれを捕まえて来てくれ。
…あれ？相棒…だよね？何で黒いの？