古き指導

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工場で働く田所は、部下をきつく叱りつけた。そしてその部下を殴った。決して憎くてしているわけではない。部下を信じているからできる面もあった。
その部下の目をじっと見る。部下の目は擦れていない。おれの言いたいことを分かってくれている。田所は確信した。
人を褒めないわけでは無い。田所はそんな狭量ではない。アメとムチは使い分ける。
にこにこ笑いながら指導して人が言うことを聞いてくれるなら、それに越したことはない。そんな綺麗事が通用しない世界があるということを彼はよく知っていた。
日本は愛のムチとか滅私奉公で、のし上がってきた国ではないか。バブルが弾けて不景気が続いているからと言って、何故今まで培ってきたことをほとんど否定するのか彼には理解できない。
未熟な青年たちに身をもって分からせることも必要だろうと、彼の躾の態度は変わらなかった。
彼のお陰で何人もの青年が、立派な社会人となり羽ばたいていった。
その他
公開:22/11/17 22:20

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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