仮想現実ゴーグル

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私は年に一度のピアノの演奏会に参加することを励みにしている。しかし緊張のせいか演奏を、失敗してしまうことも多い。練習の時は大抵上手くいっているのにだ。
そこで私は本番対策のために、仮想現実ゴーグルをつけて練習することにした。これをつけると演奏会の中にいるような世界が疑似体験できるのだ。大勢の人の視線や歓声を感じながら演奏した。
最初は緊張したものの段々と慣れてきて、常に平常心で演奏できるようになった。
本番に臨んだ。しかし逆に本番の演奏会の会場の様子が、物足りなく思えた。会場の人数が少なく熱気がさほど感じられないからだ。
複雑な思いに囚われながらピアノの前に座った。弾き始めると、ああやはりこの会場のピアノは素晴らしいなと感じた。
バーチャルリアルの世界がいかにリアルでも今ピアノを弾いているのは私で、練習の成果を発揮するという現実があるのみだ。私はそう気づき演奏を陶酔のうちに終了した。
その他
公開:22/11/20 21:14

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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