ネズミさん

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海辺の街の大きな駅で、ある列車に乗った。
不思議な列車で、行先もわからない。でも、行先定めぬ一人旅だ。

発車直前、一人の女性が乗ってきた。愛嬌のある、どこかミニー・マウスのような顔の女性だ。

列車が出て、窓の外には海辺の景色が続く。
アザラシの様な風貌の車掌が、切符を切りに来た。僕の斜め前に座ったその女性に「終点までですね」と言い、切符を返す。

列車は走る。その女性は次第に落ち着きがなくなってきた。僕も何だか不安になる。
しばらくして終点のいくつか前の駅で、ふいにその女性は降りてしまった。
気付けば乗客は僕一人。不安な気持ちが強くなる。
僕も次の駅で列車を降りた。

するとホームを出た列車は線路を外れ、ゆっくり海の中へ沈んでいった。
僕は唖然として、そして思い出した。
船が沈没する前には、その船にはネズミが一匹もいなくなるという話を。

あのミニーのような女性は、誰だったのだろう。
ファンタジー
公開:22/11/20 15:27
更新:22/11/20 19:16
鉄道 海辺

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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