校庭犬

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「校庭犬の条件とは」記者が問うと横に行儀よくお座りした犬が自ら答えるように小さく吠えた。
「しいて言えば雑種ですかね。昔からそうなので」と男は答えた。
「今回、廃業を決断された理由を教えてください」
「自然な流れでそうなる事、が困難になったので。時代の流れですかね。全盛期はおよそ五千頭が全国で活躍していましたが、こいつが最後です」男は犬の頭を撫でた。
「私自身も何度か遭遇した記憶がありますがそれらが演出だったとは知りませんでした」
「基本は野良犬に気をつけましょうという啓蒙です。やがて学生達に非日常的な刺激を与えるエンタメ的な要素が含まれました」
「最後の公式活動に向けて一言」
「今回学校のご厚意で侵入を許可して頂きました。学生達の記憶に強く残る事を祈っています。よし行け、タロ」
首輪を外すと犬は勢いよく駆け出した。

何処からともなく校庭に迷い込んだ犬に生徒たちが悲鳴に似た歓声をあげた。
その他
公開:22/11/20 08:12

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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