カメのアピール

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カメはウサギとの競走で惨敗をした。実はカメはウサギが油断して居眠りしないか秘かに期待していた面もあったのだが、そんな奇跡的な出来事が起きるはずもなかった。
カメも自尊心はあるから最後まで自分は、全力を出して走った健気だろうと暗に訴えた。だが日本人がいかに判官贔屓だろうと、こんな大差をつけられたカメを贔屓する人はほとんどいなかった。
ならばと視点を変えた。カメがいくら努力を重ねてもウサギに脚で敵わないことは、誰が考えても分かること。そういう競走をさせた主催者側に問題があるのではないか。
この主張は受け入れられた。土俵が違う者同士を、無理に同じ土俵に上げたのはまずかった。主催者はカメに謝罪し、勝負は無効としカメに賠償金も支払われた。
それからの勝負事は力の拮抗した者同士で、公平公正なルールの元で行われることとなった。
私の惨敗の屈辱も全くの無駄ではなかったと、カメは少しだけ溜飲を下げた。
その他
公開:22/11/15 14:49

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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