心くすぐる香り

夏休み、僕ら家族は田舎の爺ちゃんの家に泊まりに行く。
僕は爺ちゃんの家が好きだ。だってここは妖怪の住む家だから。
去年は座敷童と一緒に遊んだ。
「来年にはもう…儂が見えなくなってるかも…」と、寂しそうに話していた座敷童と今年も遊んだ。
でも家の中でずっと遊んでいるのは退屈で、他の妖怪も見て見たいと思い、僕はこっそり夜中家を抜け出そうとした。
そんな僕の足の間を何かがちょろちょろと走り、それに足を取られた僕は転んで皆に気付かれた。
「それは”すねこすり”じゃな」
お説教が終わった後で爺ちゃんが教えてくれた。夜の道を歩こうとする人の足にすりつく妖怪だという。
すねこすりが触れた場所に手で触れ、においを嗅いでみる。大好きな爺ちゃんの畑のにおいがした。

僕ら家族が家に戻ってくる時、どうやらすねこすりも一緒について来たようだ。
すねこすりに家中こすられたせいか、ウチにも妖怪が住み着くようになった。