たつこたつ

4
3

ブルル ブルル ブルル
ぼくの天板で震えるスマホに気づいて、綾乃さんが目を覚ます。
うわぁ、遅刻……
まだ眠そうにしょげながらも、慌てて出勤の準備をする綾乃さんを見ながら、ぼくは自分を責めた。ぼくのせいだ……。こたつは寝るところじゃないし、寝たらお肌にだって悪い。それなのにぼくは……綾乃さんとのあったかい時間よ続け。どうか目を覚まさないで。そう思ったから、その通りになって綾乃さんは遅刻した。
プロのこたつとして恥ずかしい!
シューッ×4
4本の脚が勢いよくのび、こたつは立った。立てた自分に驚くままに屈伸してしまう。目線が上下して見える景色が新鮮だ。そうか、こたつで寝かせないためなら、こうして立つことだってできるんだ。綾乃さんがまた寝てしまった時にも、ぼくはこうやって立つことができるだろうか。そんな不安を拭い去りたくて、こたつは屈伸を続ける。天板にのった蜜柑を落とさないように気をつけながら。
公開:22/11/13 17:13

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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