背筋が凍る葡萄

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葡萄、それは薄暗い紫色の皮に包まれた幻想的な果実である。男子高校生の拓哉は、それを明確に理解していた。今年も奴らが来る。真夏の日照り、蒸気が舞い上がるような中で、無機質なベル音が木造の家に響いた。

女の駆け足が木目を撓らせる。その女は虚構の笑みを浮かべ、深く帽子を被った男に会釈した。数秒後には白の鎧に姿を隠した奴らがいた。彼の背筋は凍っていた。

拓哉は手慣れた手つきで白の鎧を剥がした。姿を見せたのは大地の豊富な栄養を受けた葡萄、奴らは個々で自立していた。堂々とした姿に、彼は嫉妬せざるを得なかった。手を伸ばして微かに触れた指先の感触を忘れることはない。その感触は間違いなく彼に劣等感を与えた。指圧は徐々に上がり、水気を帯びた皮に映るのは彼の冷淡な表情であった。突如、指先が葡萄の皮を貫いた。そこにいるのは罪悪感と解放感に浸る一人の青少年だった。

目の前で立ち竦む母は言った。「何してんの?」
ホラー
公開:22/11/15 22:37

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