号泣喫茶店

泣けない大人たちが泣くための喫茶店があった。

泣き終えたら気分もすっきり。
帰る時には笑顔というおまけ付きだった。


泣けない人には「怒りブレンド」という裏メニューがあるとい言う。


ヒロキは怒りブレンドを注文した。
怒りで爆発しそうに苦いコーヒーだ。

一口飲むと、ヒロキは、自分を捨てた女、ユウコを思い出し、一瞬で怒りが沸騰した。

「ユウコ、美人でわがままで僕の気持ちを弄んだ。許せない」

ヒロキは怒りの勢いで会計を済ませると、ユウコのマンションまで行き、土足で部屋に上がり込んだ。

「ユウコ、俺が黙って身を引くと思ったら大間違いだぞ！」

「ヒロキさん！」

ユウコは目を丸くした。その目にはみるみる涙があふれてきた。

「ヒロキさん、戻ってきてくれたのね」
「ユウコ、俺はお前を愛してる。結婚しよう」
「はい！」

ふたりは固く抱きしめ合った。
ヒロキは号泣していた。