心くすぐる香り

ノンカフェイン珈琲を開発した私は部長に呼び出され、怒られた。
「カフェインの入っていない珈琲を珈琲と呼べるか馬鹿者！」
さっきからずっとこの調子。カフェインの過剰摂取か？興奮状態続いている。
「誰か飲み物を持ってこい！」
その言葉に後輩がアイス珈琲を持って来た。それを一気に飲み干す部長。ふぅ…と息を吐き、余韻を楽しんでいる。
それを見て私はニヤリと笑う。
『どうです部長？私の開発したノンカフェイン珈琲の味は？』
部長が驚きに目を見開く。今度は私のターンだ。
『仕事終わり、緊張が解けた後に飲むなら興奮を冷ますノンカフェインが最適です。また、カフェインを控えなければならない妊婦さんでもこれなら安心して飲めます。味の保証は…部長がよくお判りでしょう？』
してやられた…という表情を浮かべる部長。
「悪かった…これは確かに珈琲だ」
珈琲の香りに心くすぐられたのか、部長の顔には苦い笑みが浮かんでいた。