心くすぐる香り

犬の世界では土のニオイのする雄がモテると聞いた。
成程…と納得する。私の愛犬・花子は園芸が趣味の彼が大好きだ。
彼も犬が好きだからと花子を可愛がってくれる。それは嬉しいけど…彼女の私を放っていてその子ばっかりに構うなんてズルくない？
嫉妬した私は花子から彼を奪う為にクッキーを焼く。シンプルなバタークッキーだが焼きたての香りは格別だ。
それに紅茶も淹れて、さあどうだ！
彼のお腹が花子のようにきゅ～っと鳴く。かわいい。
クッキーを差し出すと彼は私の指まで口にする。
もう！犬みたいなことしないでよ。と、怒って見せるが悪い気はしない。甘い一時に酔いしれる。
花子が彼から離れた。どうやら拗ねてしまったようだ。日当たりのいい場所で昼寝を始める。
そんな花子に私はそっと近づく。お日様を吸収した花子のニオイ…たまらない…
「彼氏の僕を放っておいてその子ばかりに構うなんてズルくない？」
彼も花子に嫉妬した。