アナログ・クリスマス

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新米サンタクロースは、悩んでいた。

配達できずに、一つ残ったプレゼント。
端末で「誤配チェックシステム」を確認したが、配り忘れはない。

ただ、心当たりはある。
街の郊外にある、大きなツリーが飾られた一軒家。いつも夜遅くまで男の子が待っていてくれる。

GPSを見ても、彼の家は映らない。トナカイロボットは、情報がないと目的地にたどり着けないのだ。

「困ったな」

そんな時、大先輩サンタがそっと肩を叩いた。

「わしらの頃は、そんな便利なものはなかったよ。方位磁石と地図で、一軒一軒まわったものだ」

そういえば、新人研修の時に教わったっけ。

ロッカーから、ほこりをかぶった方位磁石を取り出した。あとは第15区の地図、っと。

生きたトナカイが引っ張るソリに乗り、地上へと向かう。

「待っててくれよ、今行くから!」

昔の知恵だって、なかなか捨てたもんじゃない。
公開:22/11/12 14:39
更新:22/11/12 15:08
#研究室ライブ #圏外のクリスマスツリー

ろっさ( 大阪府 )

短い物書き。
皆さんの「面白かったよ!」が何よりも励みになります。誰かの心に届く作品を書いていきたいです。

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