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 夏空の色はきっと本当は絵の具では表現できない。透明なのに湿った絵の具などこの世には夏空しかないのだ。
 透明なじめつく空気の中に檸檬を落とした水飛沫が舞う。そこにかかる虹は、青い春と云うが、肌に張り付く白い半袖は愛おしい暑さの天成だ。
 半分にした氷菓をあなたに渡した時に告げる言葉も、輝く石も青い春か。これはあなたに贈る簪だ。古びたしきたりだが、相応しい日々であった。
 青くない春。貼りつく白は暑さだけが起因ではない。この日にしたのは春ではないからだ。凍てつく冬でもないからだ。ひたすら熱く燃える心の臓。あなたの与えた花束は、この向日葵のように太陽に向かう歴史である。
その他
公開:22/11/06 02:58

街角ニューカペナ( 東京 )

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