ある作家の講演会

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おれの書いた小説が、信じられないことに爆発的に売れるようになった。その作家としての成功物語を講演してほしいとの依頼がきたので、おれは引き受けた。
まずまずの盛況だった。またお願いできますかねと編集者から言われ、ああいいですよと安請け合いをした。当然しばらく経ってから、同じような講演をしてくれという意味だと思ったのだ。
だが編集者の言いたかったのは、次々と別な土地で間を置かずにやってほしいとのことだったようだ。戸惑いもあったが、ちやほやしてくれるし美味い酒や料理も食べられるから悪い気分でもなかった。
スマホで妻や子どもに連絡を取っていた。最初は普通に連絡ができていたのだが、だんだんラインの既読もつかなくなり電話も繋がらなくなった。
講演はそろそろ打ち止めにしてもらって、そろそろ家に帰りたいのですがと言うと何を言っているんです。あなたの帰ることのできる家は、もうどこにもないですよと笑われた。
その他
公開:22/11/04 22:16

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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