幸せの蝶

神秘的な蝶が現れるようになった。白い羽根を羽ばたかせ、光をまぶすかのように華麗に舞うのである。
見た人はみんなその蝶に魅了された。幸せな気分になり、実際にその後も幸せな人生を送った人が多かった。
見るだけでは物足りなくなり、捕まえて我が物にしようと考える人もでてきた。しかしいつも、寸でのところで逃げられてしまうのであった。
蝶は神出鬼没に崖の上や、マンションの高層階、はたまた路上に現れたりもした。
夢中になった人が捕まえようとすると、ぱっと身をかわされ転落死してしまうか車に轢かれて亡くなってしまうのであった。
どこ吹く風で、蝶はまたいろいろ所に現れて人々をまた幸せな気分にさせた。
人の血を吸って蝶はまた一段と美しく輝くのかもしれない。
人を不幸のどん底に叩き落として、他の人に幸せを分け与えているのかもしれない。
蝶が今日も美しければ、そんなことはどうでもいいことだった。