社長の銅像

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銅像の除幕式。
社員が銅像前に集まり仰々しく式典を盛り上げる。
地元新聞社の記者にも取材を頼み箔を付ける。
主役である御年75歳の社長は一人満足げに自身の像の横に立ちその瞬間を今かと待っていた。
「銅像って死んだ後に建てるもんじゃないの」誰かが小声で囁いた。
「建てる程の偉業もないのに」冷ややかな声は続く。
司会の声が響いた。
「…つきましてこの度、徳田丸一社長が長年の功績を認められ『白綬褒章』を受賞した記念として銅像を…」
「いつのまにそんな賞受けたんだ」「白綬…聞いた事ないな」
見かねた誰かが口を挟む「要はこういう事だ…」

お願いします!の声に社長自ら除幕し銅像があらわになる。拍手が巻き起こる。

「…なんだ。じゃあ銅像を建てたいって社長が言い出したのか」
「でも動機がないと銅像なんかそう造れないだろう。だから…」「あー、そっちを先に」
社長の胸に見慣れぬ白いリボンのメダルが光る。
その他
公開:22/11/03 10:17

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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