良案文書

うちの会社には、謎がある。仕事上困った事が起こると次の日、プロジェクトリーダーの机の上に「良案文書」と書かれた書類が置かれているのだ。その内容は、まさに良案ばかり書いてあり、仕事を手助けしてくれる。一体誰が何の為に置くのだろうか？うちの会社内の誰かなのは確実だが、この良案文書を自分の意見として挙げれば確実に出世するし、皆の評判も上がるはずなのに、勿体ない事をする奴がいるもんだ。その一方で中年社員の石原さんは、仕事中はうたた寝。起きたと思ったら煙草休憩。本当に使えない給料泥棒だ。ついには後輩に部長の座を奪われたりしている。勤続年数だけは無駄に長いから色々知ってはいる。だからクビにすることもできない。ある日、俺は会社に忘れ物をして夜、取りに行った。すると石原さんがまさに良案文書を机の上に置いているのを見た。
「石原さんだったんですね」
「見なかった事にしろ。俺は目立つのが嫌いなんだ」