正しいハミガキ

2
1

彼女が初めて、我が家に遊びに来た。
まだ名前も教えていないのに、我が家の猫は彼女にべったりだ。
「その足の傷、どうしたの?」
「実はハミガキ中にさ…」
彼女は、あっと声をあげた。
「それ、妖怪『喰(は)み餓鬼』の仕業だね」
彼女は猫を膝に乗せた。
「子供の頃、ちゃんとハミガキしろって言われなかった?じゃないと、お化けが来るぞって」
「喰みって、噛むって言う意味の、はみ?」
「そう。喰み餓鬼は、正しくハミガキ出来ない子を噛みに来るの。餓鬼は子供のような大きさだから、足を噛まれるんだね。ちゃんと歯磨けてる?」

うちの猫は我が家に来て早々、洗面所で遊び道具を見付けた所から名前が決まった。今や赤子ほどの大きさに育ったうちの猫を抱えながら、彼女は猫のようにこちらをじっと見つめている。

この傷は、ハミガキ中に朝ごはんをねだってきた愛猫に付けられた咬み傷なのだが。。
愛猫の名を、ハミガキという。
その他
公開:22/10/27 17:00

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容