専用の口説き文句

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 君が開けた口からは喉の奥まで見えそうだ。フルーツパフェの生クリームと桃を山盛りスプーンに乗せ、頬張る。
 君は落ちそうな頬を左手で支えている。僕はその姿をスイーツ代わりにブラックコーヒーが入ったカップに口をつける。苦みが甘さで抑えられ、ちょうどよい香ばしさが喉を通りぬける。僕がカップを置くとき、すでに君はモンブランにフォークを差していた。
「なあ、俺ばっかり食っていいのかよ。お前、コーヒーだけじゃん」
 僕はスプーンを持ってクリームブリュレを掬い、それを君の口元に持っていく。一瞬だけ目を丸くさせた君は、すぐに目尻を下げて口を開けた。僕はそこへスプーンを入れる。
「いいんだよ。僕は極上のスイーツをもらっているから」
 君は瞬きを数回する。意味がわからなかったか。次の言葉はわかるかな。
「僕の作るスイーツ、これからも食べてよ。毎日三食つくるから」
「それはいらねえ。うまい料理と弁当つくれ」
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公開:22/10/24 18:00

志雨

2021年3月に小説を初めて完成させました。いろいろなジャンルのショートショートを書いていきたいと思います。
 

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