アンガーマネージメント

「ちょっと、あなた。みんなちゃんと並んでいるんだから割り込みは止めてね。」
「なんだ、うるさいばばあだなぁ。ちょっとくらいいいじゃないかよ。お前ら年寄りは時間たっぷりあるんだろう。若いものに譲れよ。」
傍若無人な若者に怒りがこみ上げた。なんか言ってやろうと思ったのだがチッチッチッチッチッチッすでに6秒が過ぎた。怒りが消えていく。おばあちゃん、悪いけど我慢してね。ぼくは何も言えない。

アンガーマネージメントの講習を受けてから怒りが6秒以上持続することはなくなった。小さい子供が虐待を受けていても、電車の中でタバコを吸っている兄さんを注意した高校生が殴られていても、銀行の前でおじいさんがペラペラの背広を着た若者にお金の入った封筒を渡していても、6秒すると、ま、いいか。怒りを忘れると無気力になるなぁ。あぁ眠い。早く帰りたいからぼくも電車の列のじいさんの前に割り込んだ。