定形外

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「お買い上げありがとうございます」
営業スマイルで渡されたレシートに『ありがとう』の印字を見て、朝から不愉快になった。
期限は10秒後。面倒くさいと思いながら嫌々返す。
「……リガトウゴザイマス」
発言ポイントのチャージを確認。総菜パンを鞄に突っ込み、握り潰したレシートを捨てる。無視して言わない奴も多いだろう。廃棄された『ありがとう』がゴミ箱に溜まってる。

食育法の改定により、食に関わる挨拶に賞味期限がついた。
買い物で発行されるレシートの挨拶を、期限内に言えばポイント還元。強制的に言わせても飯がまずくなるだけだと思う。

夕方、買い物を済ませて帰宅。仕事で遅い親父が帰る頃、見切りの弁当は『いただきます』も『ごちそうさま』も期限切れだ。
「おい、弁当どうした?」
「今晩はオリジナル。ルーのカレーだけど」
年一回の誕生日くらい、定型外で良いだろう。
肩をすくめた親父が缶ビールの封を切った。
その他
公開:22/10/17 13:14
月の音色 月の文学館 テーマ:賞味期限

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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