禅カフェ

行きつけのカフェ「ZEN」。ミニマリストのような店内でゆったりとした時間を過ごす。いつもマスターがコーヒーを運ぶ。テーブルにカップを置くと問いをかけられる。「明後日の猫はどこへ？」
私は答える。「昨日の夢のベッドで寝ています」
マスターはにこりと笑う。そして香ばしいミディアムローストを味わう。常連客はマスターの問いを楽しみにしている。上手に答えた時のコーヒーはひときわ美味い。
あるとき見慣れぬ客が入ってきた。
「頼もう！」
マスターは同業者と察知したのか、背筋を伸ばしてコーヒーを出し「地底のマグマリゾートは如何？」と問いかける。
客は「天井のオーロラネズミの穴」マスターは続けて「枯れ葉一枚の音響は？」客「戦慄するカマキリ」マスター「山手線が殲滅する日は？」
客は沈黙し、卓上の砂糖壺の砂糖をコーヒーカップにどさっと入れるとスプーンでかき回して一気に飲んだ。
「よい朝ですね」マスターが言った。