賞味期限

私は今日も一風変わった絵画の展示即売会に足を運ぶ。
入り口には荒々しい竜の絵。曲がりくねったその体は形の悪いきゅうりで出来ており、真っ赤な瞳は歪な形のトマトである。
二股三股に分かれた大根が真っ白な稲光を表現し、野菜アートを初めて見る者を圧倒する。
落札表を見れば早速この絵画に何名もの買い手がついていた。
形の悪さ故に本来であれば捨てられる野菜を、加工せずに工夫して売る芸術肌の農家達。
一人では食べきれない野菜を皆でお金を出し合い、購入するお客さん。
ここの芸術作品は賞味期限付きだが大人気である。
視覚と味覚で楽しむ食べられる芸術作品。
中にはバナナのシュガースポットを使い、時間とともに変化する芸術品を見せる人もいる。
瑞々しい果実に誘われ、甘いひと時を過ごしに恋人達がやってくる。
後世に残る絵画ばかりが芸術品ではない。
美術館の最奥、アンチンボルドの絵画が訪れる人達にそれを教えてくれる。