いつもと違う

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 バスが見えてきた。僕の心臓は小躍りを始める。停留所に止まったバスの後部扉が自動で横に開いた。
 高校に入学して半年が経つ。僕は定位置となった最後部の窓際の席へ向かい、座ってから右側を見る。その窓際に座る同級生の真衣は、いつもと同じく窓の外を見ていた。話したことは一度もない。
 高校近くの停留所にバスが着き、高校生が順に降りていく。僕が最後尾、その前を彼女が歩くのは毎度のことだ。
 今日も通学路の途中で彼女を追い越こす。体が後ろに引っ張られて振り向くと、真衣が僕のシャツをつまんでいる。
「毎日、私を見るの止めてくれない」
 僕は血の気が引くのを感じた。
「ごめん。気味悪いよな。話しかけずに見てるだけなんて」
 視線が空中に泳ぐ。真衣が僕のシャツを強く引っ張った。
「違うの。私も窓越しに見てるから。目が合ってるみたいで恥ずかしいの」
 真衣は顔が赤らむ。追うように僕の鼓動が激しくなった。
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公開:22/10/14 18:00

志雨

2021年3月に小説を初めて完成させました。いろいろなジャンルのショートショートを書いていきたいと思います。
 

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