400字で伏線を張るだけの男

10
3

従姉の見舞いに出かけた。コロナ禍の影響で今日まで伸びてしまった。
「調子はどう?」
「ぼちぼちね」
「ショートカットにしたんだ。とても似合ってる」
「ありがと。入院してるとこっちの方が楽なのよ」
自慢の長い黒髪をショートにしたことは意外だった。
「だいぶ涼しくなってきたね」
「そうね。セミの抜け殻はどうしたかしら?」
「抜け殻?」
「ううん。なんでもない」
「そうだ。何か買ってこようか?」
「そうね。チョコのお菓子が食べたいわ」
僕は売店へ向かった。確か甘いものは苦手だったはずだが…。すると医師とすれ違った。
「久しぶりだね。お見舞いかい?」
「はい」
医師が左手でペンを持っていたことに違和感があったが、そのまま会釈して通り過ぎようとした。そのとき医師が脇に挟んでいたカルテを落とした。僕がカルテを拾って渡そうとしたとき、そこに書かれていた内容を見て愕然とした。
「そういうことだったのか…」
その他
公開:22/10/13 22:54

ひろいてん

面白そうなので参加してみました。
(サーバーに問題が発生したらしく、別のアカントで新規登録しました)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容