こんな素晴らしい夜に

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トポトポトポ
ワイングラスに赤ワインを注ぐ。その深紅に私の瞳は囚われていく。ああ、なんと美しいのだろう。
私はワイングラスに口をつける。口腔から食道へ、雨垂れよりも激しく私の喉をつたっていく。
なんと素晴らしい夜だ。ワイングラスに満月を透かして覗き込む。美麗、耽美、流麗。それらの言葉が陳腐に思えるほどの素晴らしい光景がそこにはあった。
深紅の海から神々しい光を帯びて現れる月。こんな日にはぴったりの祝福であった。
私は足元のモノをハイヒールで蹴りあげる。
もちろん動きはしないし、息もない。モノだから。
その事が途端に面白く思えてきて、私は笑みをこぼす。
「やっぱり赤がお似合いね」
私はそのモノに赤ワインをぶちまける。床に深紅が広がる。そのまま私はこの部屋をあとにした。
部屋に残っていたのは転がり落ちたワインボトルと月光に照らされた真っ赤な死体だけであった。
ミステリー・推理
公開:22/10/16 22:16
更新:22/10/17 14:46

リマウチ

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