作家の転身

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私は物語が書けなくなった。いや正確に言えば書けるのだが、誰も買わないどころか興味さえ示してくれなくなったのである。
性の乱れだの、不倫だの騒がれている昨今であるから私は手本を示そうと、清らかな男女交際の文学を書いているのである。
しかし編集者から半ば呆れられ、あんたこんな調子なら契約を完全に打ち切るよと言われてしまった。
作家として契約を打ち切られたら、もう致命的である。糊口を凌ぐため、心を鬼にして社会の裏側について調べ始めた。
本当は書きたくなかったのだが、裏社会の人間が暗躍する物語を書いた。そして今までは決して書かなかった性描写、暴力シーンなども書いた。
羞恥の念で編集者に作品を持って行ったが、いや今までのあんたの作品の中で一番いいよ、やればできるじゃんと変に褒められた。
意外なことに、ベストセラーになってしまった。私がずれていただけだったのか。はたまた社会が、どこかずれているのか。
その他
公開:22/10/16 21:14

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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