伝説の物語

町に住む青年が、城に住むお姫様に偶然町中で会った。そこにいきなり暴漢がお姫様を襲ってきたので、青年は身を挺して助けた。お姫様は青年を見初め二人は結婚した。

「来週パーティを開きましょう。ドレスも新調しなくてはね」
「でも先週もやったばかりだろう。ドレスだって作り過ぎじゃないのか
」
「何言ってるのよ。私たち二人はサクセスストーリーの象徴なのよ。二人はいつまでも幸せに暮らしましたという、実績を残す義務があるわ。また増税をすればいいじゃない」

王子はそれもそうかと思い直した。おれたちの物語は子どもにも絵本として読み継がれてゆく、神話のようになっているのだ。つまらないことで妻を咎めた自分を恥じた。

王の圧政に耐えかねた民衆が一斉蜂起しようとしたが、事前に取り押さえられ全員死罪となった。伝説の物語を汚すことが許されるはずがないから当然のことである。
二人は死ぬまで幸せに暮らし物語は完了した。