生詐欺

「また生詐欺か」
「ええ、これで四件目です」

結婚詐欺師、生詐欺。被害者に欠陥を持ちかけ、一緒に店を出したいと夢を語り、高額な資金を出資させ、持ち逃げするという女だ。

「人の心を弄ぶなんて最低な女だ。一刻も早くコイツを捕まえなければ」

しかし生詐欺の尻尾は掴めなかった。痕跡を一切残さず、見事に消えてみせる。実に腹立たしい。仕事が終わり、家に帰る。妻が出迎えてくれる。
「おかえりなさい」
「ああ」
妻の作った料理を食べる。美味い。結婚十年目だが、生詐欺のような女が世の中にはいる中、俺は幸せな結婚をしたのだと思う。
「疲れてるようね。仕事大変なの？」
「ああ、犯人は結婚詐欺師の女なんだ。コイツが厄介でな」
「ねえ、私ね。そろそろ店を出そうと思うの。雑貨屋さん」
「いいじゃないか」
「それで資金を」
油断した。まさかこんなにも近くに生詐欺がいただなんて、この時は夢にも思わなかった。