熊がやってきた

日曜日の昼下がりに熊がふらりと入ってきた。マンションのオートロックを無視したのか。胸元に白い筋、月の輪熊か。茫然と目を合わせていると妻が「さあ、足を拭いて」とタオルを手に声をかけた。「身体も汚れている。洗いましょう」と熊をバスルームに連れて行った。
俺がリビングでテレビを見ているとなかなか出てこない。バスルームを覗くとなんと妻が熊と一緒にバスタブに入っているではないか！俺が口をあんぐりと開けていると妻は「一緒に入って欲しいって。綺麗になったわ」と笑う。
リビングに戻ると熊がのそっと入ってきた。バスタオル一枚を巻いた格好で妻がドライヤーで熊を乾かしてやる。妻はニコニコと夕食を作る。俺はなんだか口数が少ない。
翌朝、俺が身支度をすると熊も起きてきた。太い首にネクタイをしている。妻は俺に弁当を渡すと同じように熊にも渡した。「今日から一緒に出勤ね。慣れるまでパパ、気をつけてね。いってらっしゃい！」