ジュリエット釣り

12
3

それは喜劇のような悲劇だった。
ジュリエットが動かない。心音がない。いや、これは波の音?
彼女の口を開くと、水が溢れてきた。
『ロミオ様!お嬢様は誤って、海と毒薬をお飲みに!』
「なぜ海まで!」
まだ救いはあるはずだ。毒薬を取りだすことさえできれば。
それから毎日、俺は彼女の口海に釣り糸を垂らした。
坊主の日があれば、朝食用のアジが釣れたり、夜はイカも釣れた。
が、毒薬は釣れぬまま、釣りバカな俺は貧しくなった。
そこで、俺は釣り堀の経営を始めた。
海水と魚は彼女の口から補充した。この釣り堀は成功し、俺の生活は豊かになった。
ある日、俺は彼女の口からフグを釣り上げた。
「これぞ、毒薬に違いない!」
俺は急いで医者を呼んだ。
「目が覚めたら式をあげよう。資金はある。結婚情報誌だって…」
『毒死は免れましたが、溺死ですね』
「デ、デキシィ!」
驚き釣り堀に転落した俺は溺れ、違う式を彼女と挙げた。
恋愛
公開:22/10/12 13:53
毎週ショートショートnote ジュリエット釣り

そるとばたあ( 神奈川 )

★そるとばたあの400字SSは、ことば遊びと文章のリズムにこだわり、音を体感できる物語がコンセプトです!

★第19回坊っちゃん文学賞大賞『ジャイアントキリン群』

★2025年12月、2冊同時刊行の電子書籍
『3分間のまどろみ カプセルストーリー』(Gakken)に『恐竜バーガー』寄稿。

・カプセルストーリー(恐竜バーガー、『菊池

の選択』、六文字の返信ほか)
https://amzn.asia/d/8qmIuR7

・カプセルストーリー(特殊外来種ハンター、カンガルー・ノート、露の楽譜ほか) 
https://amzn.asia/d/iW14MdM

ショートショートの可能性と豊かさが詰まったアンソロジーですのでぜひ!
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容