お招き猫

食材に拘り、料理に拘る私は客にも拘る。
一見さんお断り。常連客の紹介あって、初めて当店の敷居をまたぐ事が許される。
店の看板は出していない。知る人ぞ知る隠れ家的な店。
食材との出会いは一期一会。気に入った食材が手に入らなければ店は休み。不定休なので予約なんて当然できない。
そもそも客に拘る私は常連客であっても客が料理に合わないと思ったら提供を取りやめる。料理に合う客を選んでいる。
そんなワガママがよく通用するなって？確かに。普通ならこんな店すぐに潰れてしまう。
だが当店はお招き猫に認められた店でね。そのワガママが通用するんだよ。
お招き猫は招き猫と違い、千客万来を目的としたものじゃない。
お招き猫は「お招きいただき、ありがとうございます」と店と料理に感謝の心を持った特定の客のみを招く招き猫。
つまり当店はお招き猫が客を選んでいるんだ。
お招き猫の審査はあのミシュランより厳しいと専らの噂だ。