試着室

６００万円と書かれたそれを手に取り、試着室に入る。
ふむ…これだと着服はバレバレだな…額を下げてみよう。

１０万円とか書かれたそれを手に取り、試着室に入る。
うん。これだとバレそうにないな。今回はこれくらい着服するか。

「お客様、もう少し大胆に着服されてはいかがですか？堂々としていれば５００万円くらい余裕ですよ」
１０万円の着服を依頼したら店員に提案された。
いや、無理無理。６００万円でバレバレなんだから。
「大丈夫ですよ。あちらのお客様を見て下さい。先月１０００万円の着服に成功して今回２０００万円を着服しているんです。そんな素振り見せていないでしょう？お客様、何事も冒険ですよ」
冒険か…う～ん…少し考えさせてもらおう。今日は１円も着服せずに店を出た。

翌日、昨日の客の４５００万円着服発覚がニュースで流れていた。
冒険しなくて良かったとホッとしたが、翌週には警察がウチにもやってきた。