福笑い

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「美しい……」
 目隠しを外した僕は、高さのずれた2つの目や、おでこにある口や、横を向いた鼻を見て、そう呟いた。
 
 僕は子どもの頃から福笑いが大好きだった。
 目隠しをして、紙に書かれた顔のパーツを並べて遊ぶ、お正月なんかにやるやつだ。
 上手く並べたつもりでも、大抵おかしな位置に目や口や鼻が置かれている。
 出来上がった顔を見てみんなは笑うのだが、僕はむしろ「綺麗だな」と思っていた。
 そのアンバランスさの中に、本当の美しさを感じたのだ。
 一人で留守番をする時も、福笑いで遊んでいれば少しも寂しくなかった。
 
 だが、紙でできた福笑いは所詮作り物。リアリティがない。
 僕はいつしか「本物」の福笑いで遊ぶようになった。
 
 今日もたっぷり遊んで満足した僕は、赤く汚れた手を洗おうと洗面所に向かった。
 そして洗面所の鏡を見た僕は、息を呑んだ。そこに映る顔の、あまりの美しさに……。
ホラー
公開:22/10/09 01:31

和倉幸配

断続的にではありますが、趣味で細々とショートストーリーを書いています。

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