ポイントカードまた別の話

優しさポイントカードが国民全員に行き渡った。優しいことをするとポイントが貯まるのである。
学生はポイントを貯めると内申点が上がり、進学や就職に有利になったりした。
社会人もポイントを稼ぐと出世に有利になったりした。人格者として認められると、政治家への転身もしやすくなった。

ただポイントの稼ぎ方が少々問題だった。例えば事情があって電車の中で座るより立っていた方が楽だという人にも、強引に席に座らせればポイントが稼げた。
ひきこもりの人を無理に外に連れ出して、学校や会社、遊びに連れていったとしてもポイントが稼げた。
関係した人が自殺をしたとしても、葬儀の席で大泣きすればポイントが稼げた。

社会的弱者がありがた迷惑だ、こういう時はこう配慮してほしいとお願いしても感謝の気持ちが足りない人格者に逆らうとはけしからんと、ますます追いやられた。
無難に点数を稼ぐ人が上に行き偏った社会倫理は続けられた。