読書ダイエット

「読書ダイエット」なるものがあるらしいと友人から聞いたのは上京して間もないころだった。大学生になったばかりで、SNSもようやく使い始めた私に彼女はスマホの画面を見せてきた。＜読むだけで痩せる本＞とでかでかと書かれたページだった。私は彼女に勧められるがまま、教えてもらったリンクから購入ボタンを押した。
翌日、例の本が届いた。早速開いてみると、「真夏」だの「炎」だの「太陽」だの「メラメラ」だの、見ているだけで熱くなるような言葉が多用されていた。読んでいると汗をかいてくる。なるほど、これで脂肪が燃焼されるという仕組みか。私は、今までにないダイエットに熱中してしまった。
その後、テレビにも取り上げられるようになり、瞬く間に「読むだけで痩せる本」は世間に広まった。いつでもどこでもできるダイエットに皆興味を示したのだ。
あるとき、満員電車で皆がその本を手にしていた。あっという間に電車は汗の海と化した。