最後のオーディション

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「このオーディションで最後にするよ」
「ホントに最後なのか?」
「ああ。これで落ちたら諦めるよ」
「諦めてどうするんだ」
「じっ、実家を継ぐよ…」
「そうか…」
都内の大学に進学して、友人に誘われて見に行った演劇に魅了された。それ以来、演劇にどっぷりとハマり、演劇部に入った。大学卒業後は就職せず、バイトをしながら演劇を続けている。大学を卒業してから早10年が経っていた。

「緊張してきた」
合同オーディションでは各自小道具を一つ持ってきて一人芝居を演じることになっていた。モニターで場内を伺うと観客席で何枚かプラカードが上がっている。
「どこの事務所でもいいから、俺にも上げてくれよ」
祈る思いで順番を待った。
「それでは次の方、どうぞ」
「はい」
「今日お持ち頂いたのはその壺ですか」
「そうです」
「それでは、一万円からスタートします」
何を間違えたか、オークション会場に来てしまったようだ…
その他
公開:22/10/03 22:14

ひろいてん

面白そうなので参加してみました。
(サーバーに問題が発生したらしく、別のアカントで新規登録しました)

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