生命の海

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私は船首に立っている。目の前には広大で無表情な海が広がっていた。
「おい、早くしろ」
私の後ろを大勢が取り囲んでいる。みな、私が身を投げるのを待っていた。
私の家族はすでに海へ取り込まれ、あと私を残すだけとなった。
波が手招く。私は死への恐怖で足が震え、その場から動けなかった。父や母は生け贄は名誉なんだから怖がらなくていい。偉大な海もきっと受け入れてくれると下手くそな笑顔で言い聞かせていた。
潮風が不安を煽る。1人になった途端何もかもが怖くなっていった。名誉を与えられる者がこんな目付きで睨まれるものなのか。誰も私の生を望んでいないのでないか。考える度体が身震いした。
私は下を覗き込む。ここでは幾百の命が生まれ、幾百の命が死んでいる。きっと私にはもう選択肢などないのだろう。
私は楽になるため空へ歩を進めた。

あぁ海よ。なぜ貴方はそんな表情で私達を殺したのでしょうか?
その他
公開:22/10/03 21:11

リマウチ

超ショートショート書いていきます

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